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「恐るべき子供たち」再読&再々読 [ブック]




遊びをせんとや生れけむ 
戯れせんとや生れけん

…というわけで、ジャン・コクトー『恐るべき子供たち』です

もはや、再読なのか、再々読なのか、再々々読なのか…定かではありません
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恐るべき子供たち 岩波文庫
怖るべき子供たち 角川文庫
怖るべき子供たち 角川文庫クラシックス
恐るべき子供たち 光文社古典新訳文庫
恐るべき子どもたち 小学館文庫

万人にお薦めできる感動の名作というわけではありません
おそらく、わけのわからん世界だ~と投げ出してしまう人も多いでしょう(特に、結末の部分で)
でも、それでは、夢幻王国の女王エリザベートに鼻で笑われてしまう
あまり迂闊なことは言えないので、無難に比喩で語っておくと…これは、おもちゃ箱の中身をぶちまけたような作品
ただのがらくたと見るか、きらめく宝石と認めるかは、読む人それぞれ
読者を試す、リトマス試験紙のような作品です

今回は、まず光文社古典新訳文庫にチャレンジしてみました
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訳者がまたもや頭の中将さんということで、目玉おやじのイメージがパッと浮かび上がりましたが…素直に認めておきましょう
これは「買い」です
なんたって、コクトー自身によるイラストが62点も収録ですから!

そのうちいくつかを紹介しておくと…

「引きこもり」姉弟、エリザベートとポール
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そして、悪童たちの司令官ダルジュロス
イラストは、コクトーの思い入れたっぷりの出来栄えです
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彼の鉄の手が握れば、雪の玉は9枚刃のナイフより罪深い塊になり、ポールの胸を貫きます

致命傷(?)を負ったポールが、姉エリザベートと閉じこもる子供部屋=夢幻の王国
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ポールを慕うジェラール、そしてダルジュロスの分身(女性形)アガートまでが加わり、繰り広げられる「遊び」、「夢」、「混沌」…
彼らは濃密な感情で結ばれていますが、その未分化な感情を愛とも憎しみとも識別できません

しかし、やがて愛が「分化」し始めて…
奇跡的に保たれていた均衡が、破綻を迎えます
王国の専制君主エリザベートはそんな変化(=成長)を認めることはできず、策を弄します(おそらく、それも「遊び」のつもりだったのでしょうが)
そして、ダルジュロスの再登場、彼は自分の永遠の捕虜であるポールに黒い毒薬を送りつけます
時限爆弾が再セットされたわけです

そして、爆弾は炸裂…二人の昇天
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死にゆくポールが最後に見るのは、雪合戦の光景
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運命がいかに悠然と武器を選び、照準を定め、心臓を貫くものか…
解説によると、『恐るべき子供たち』は、運命という主題を物語の中心に置いた反近代的な小説(人間中心主義が近代文学の特徴)、ギリシア悲劇にも比すべき厳格な運命悲劇とのことですが、これにはちょっと異議あり
コクトーは、物語の結末の部分こそ最初に頭に浮かんできたイメージだと明かしています
そして、この小説は、コクトーが最愛のラディゲを失い、絶望のうちに阿片中毒に陥り、その解毒治療の最中に書かれたものです
当然、コクトーは運命を呪い、せめて自分の小説(=夢幻)の中では運命に対し復讐してやろうという気になったでしょう
ですから、最後の二人一緒の昇天は、あくまでコクトーの願望であったはず…この小説は、「悲劇」なんかではありえません(なお、二人の詩人の短い同棲生活の「混沌」が「子供部屋」に反映された、というのも確かでしょう)

そして、もう1冊、小学館文庫の方は、萩尾望都の描く「少女マンガ」
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コクトー自身の描くイラストを散々見せられた後だったので、イメージが固まってしまったようです…キャラ・デザインにちょっと違和感あり
でも、美少年ダルジュロスは、さすがによく描けてました
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少年愛…濃厚です

今日の1曲
The Story In Your Eyes 「ストーリー・イン・ユア・アイズ」/The Moody Blues
http://jp.youtube.com/watch?v=r75XWbsSx-E
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童夢

  • アーティスト: ムーディー・ブルース
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル インターナショナル
  • 発売日: 2002/09/21
  • メディア: CD

P.S.
澁澤龍彦にコクトー作品の翻訳があるのは、どうも解せないと思っていたのですが…
澁澤が仏文翻訳を試みるようになったそもそものきっかけは、コクトーだったそうです
堀口大學の軽快で瀟洒(しょうしゃ)、粋で贅肉のない訳文に魅せられた澁澤は、「詩人コクトオは、何と言おうか、わたしの少年時代の『神』であった」とまで述べています
東大仏文科に入学し、シュルレアリスムの創始者ブルトン経由でサドを発見してからはコクトーの軽やかさに不満も感じたようですが、怠惰や無気力を拒否するコクトーのダンディズム(=「軽さのエレガンス」)は澁澤の根底に生涯留まります
(澁澤龍彦回顧展より)


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コメント 2

Mizumizu

こんにちは。コクトーがお好きなんですね。私もです。
澁澤氏は『O嬢の物語』の翻訳が印象に残っていますが、若いころはコクトーに傾倒していたのですね。
拙ブログでは、ジャン・マレーとジャン・コクトーについて、飛び飛びですが、連載で紹介しています(いまだにとびとびながら連載中です)。日本ではあまり人気のない「恐るべき親たち」のフランス本国での高評価なども紹介してますので、よろしければおいでくださいませ。URLに連載最初のころのエントリーを入れました。
映画「恐るべき子供たち」のエントリーもありますので、トラバさせていただきます(失敗したらすいません)。拙ブログもトラバ大歓迎ですので、よろしければ送ってください。
by Mizumizu (2008-08-06 14:45) 

モバサム41

コメントありがとうございます。
Mizumizuさんのように生粋のコクトー・ファンの方に読んでいただけるのは大変光栄です。
そちらの記事も少しずつ読ませていただきます。
よろしくお願いします。
by モバサム41 (2008-08-06 21:08) 

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