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魔道の学匠 [ブック]




そそのかされて、落札してしまいました(笑)

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文芸文庫創刊
「文庫では私の尾しかお見せできません。このテレカが唯一の素顔。ではまた水中遊泳を続けるとしましょう。」

なお、文芸文庫マニアもしくは鯨ラヴで上記テレカに物欲を覚える方は、コメント入れてください
私自身は記事のネタにできたことで十分満足を得られたので、所有権の譲渡に応じさせていただきます
落札価格の5倍の金額で…(笑)

…という訳で、今回も講談社文芸文庫、続投です
しかしながら、文芸文庫は、村上さんいわく「和物の充実ぶりに比べて注目を浴びる機会は少ない」とのことで、端的に言うと洋物はアイテム数貧弱、ただし、「なかなか捨てがたいラインアップをえている」とのことで、個性的な作品が揃っていてそれなりに興味を覚えます

以下、私のコレクションの中から洋物ばかり紹介していきます
まずは、既出のものから

今では忘れ去られたフレンチ、ヌーヴォー・ロマンの旗手、ロブ=グリエの作品が2冊も文庫本で読める…奇跡です
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(左)「迷路のなかで
おなじ外観の家が続く雪に塗りこめられた街の迷路をさまよう敗残兵の姿と、「ライフェンヘルスの敗戦」と題された絵の場面とが交錯し、物語は複雑な軌跡を描きながら展開回帰をくり返す。兵士は銃撃をうけ、居合わせた医者に介抱されながら死ぬが、意表をつく結末が控えている。執拗なまでに幾何学的な描写によって独特の世界を構築し、ヌーボー・ロマンの旗手となったロブ・グリエの代表作。
(右)「覗くひと
時計の行商をするために生まれ育った離島にやってきたマチアスは、直前ヴィオレットという若い女性を殺していた――外界とマチアスの意識との有機的な関係を、事物そのものに迫る数学的にまで昇華された文体で描くことによって、青年の荒廃した深層心理をうかび上らせたヌーヴォー・ロマンの傑作。
過去記事「去年マリエンバートで」で紹介しています
上記記事に付された私の感想を見ると、「講談社文芸文庫は(学術文庫も)、値段高いな~」とのことで、13年前も今と同じことを言っており、全然進歩が見られないことが判明しました

ノーベル文学賞作家フランソワ・モーリアックも遠藤周作訳で収録です
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テレーズ・デスケルウ
自分の夫の毒殺を計ったテレーズは、家の体面を重んじる夫の偽証により免訴になった が、家族によって幽閉生活を強いられる。絶対的な孤独のなかで内なる深淵を凝視するテレーズは、全ての読者に内在する真の人間の姿そのものなのだろうか――遠藤周作がノーベル賞作家フランソワ・モーリアックと一心同体となって、昂揚した日本語に移しかえたフランス文学の不朽の名作。
過去記事「テレーズ・ラカン」で紹介しています

そして、下記2冊は、「鉄仮面」とほぼ同時期に購入したものです
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アポロニオス 「アルゴナウティカ アルゴ船物語
海の東の果て、コルキスの地の樫の巨木に張られた金羊毛を持ち帰るように王から命じられた英雄イアソンはアルゴ船の一行と大航海に乗り出した――古代ギリシアの神々や英雄が織りなす雄大な叙事詩の唯一の邦訳。
アポロニオスは、紀元前3世紀頃プトレマイオス朝のアレキサンドリアに生まれ、ロドス島で活躍した詩人。

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日夏耿之介 「ワイルド全詩
悲劇「サロメ」、童話「幸福な王子」等で高名な大世紀末の詩人唯美主義、芸術至上主義を唱道した、オスカー・ワイルド。その全詩を、独自な美学を生き抜いた巨匠・日夏耿之介が、正に彫心鏤骨、優美、秀麗な訳語によって全訳した記念碑。上田敏、堀口大学らと並ぶ、日本翻訳史上傑出した訳業。

2冊とも第2刷で2015年11月2日発行
当時「読者リクエスト復刊」という販促セールをやっていたようで、その帯が付いていました
帯のキャッチ・コピーは「読者リクエスト」で寄せられたコメントなのでしょう
「アルゴナウティカ アルゴ船物語」には、
「サブカルチャーでも度々ネタとなる、隠れた名作」――東京都・20代・男性
「ワイルド全詩」には、
「後世の人々に伝えたい、良質な文学」――東京都・20代・女性
とありました
なお、読者リクエストBEST5 は、以下の通りです
1 『ペテルブルグ』上・下 ベールイ著/川端香男里訳
2 『首塚の上のアドバルーン』 後藤明生著
3 『白鯨 モービィ・ディック』上・下 メルヴィル著/千石英世訳
4 『アルゴナウティカ アルゴ船物語』 アポロニオス著/岡道男訳
5 『ワイルド全詩』 ワイルド著/日夏耿之介訳

言わずもがなかも知れませんが、2015年販促セールの帯付きが残っているということはあんまり売れてないんでしょうね
値段高いのもやむを得ないのかもしれません

今日の1曲
You Came「YOU CAME」 / Kim Wilde
https://www.youtube.com/watch?v=4PMC_vlsvPo
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キム・ワイルド 『愛の彷徨~シングル・コレクション 1981~1993

再登場です
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澁澤龍彦 「貝殻と頭蓋骨」 平凡社ライブラリー
そして、こちらも再引用です

私が日夏耿之介の文学に近づくようになったのは、敗戦後の混乱期だったと思うが、その前に、すでに少年時代から、ワイルドの詩集や『サロメ』の翻訳などによって、この詩人の名前を知っていたということも言っておかねばなるまい。私は、敗戦直後の神田のバラックの古書店街をよく思い出すが、その頃、古本屋の棚の高いところには、きまって昭和初年に出た第一書房やアルスの豪華本が並んでいて、学生の私などには、なかなか手が出なかったものである。現在では想像もつかないほど、本の絶対数が少なかった時代であった。そんな時代の雰囲気と、日夏耿之介の名前とが、私の思い出の中では密接に結びついているのである。現実には貧しい時代であったが故に、想像世界では、いくらでも豪華に飾り立てることができたのかもしれなかった。
戦後も三十近く経った現在でこそ、神秘主義思想やゴシック小説の個別的研究もようやく盛んになりつつあるが、少なくとも私などが、その方面に探索の手をのばそうと苦慮していた時分には、英国ロマン主義を中心とした耿之介の外国文学研究は、まことに貴重な魔道の世界への手引きであった。耿之介の本のなかに散見する異色の文学者の名前を、私は一つ一つ追跡して行った。ウィリアム・ベックフォードも、ジョン・ディーも、モンタギュ・サマーズも、アンドルー・ラングも、私がまず最初、耿之介の本の中から拾い出した名前であった。耿之介が最も好む十七世紀の散文家だというサア・トマス・ブラウンの『レリギオ・メディチ』のごときは、ようやく私が近頃、その面白さに目を開かせられ、座右に置いて愛読している本の一つなのである。こうしてみると、私はいまだに、耿之介の切り拓いた広大な魔道の世界の入口あたりで、うろうろしているということになるらしい。
私が、『明治浪曼文学史』を読んだのは、もちろん、かなり後のことであるけれども、そのなかに泉鏡花との比較において、バルベー・ドルヴィリーの短篇集『レ・ディアボリック』のなかの「罪のなかの幸福」(耿之介流に書けば「罪障冥加」)の粗筋が、くわしく紹介されているのを見た時には驚いた。私は昭和三十年頃、そのことを少しも知らずに、自分でこの短篇を翻訳していたからである。なぜ翻訳したのかと言えば、バルベーの短篇集のなかで、これがいちばん好きだったからだと言うしかない。おそらく、耿之介もこれを愛したのだろうと思うと、私は自分の選択眼が間違っていなかったような気がして、ひどく嬉しくなるのである。
「魔道の学匠 日夏耿之介」より


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